2009年10月30日

“在宅起業家”が米国で台頭  外にオフィスを借りなくてもビジネスに支障なし

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20091029/208351/?ST=print
BusinessWeek  2009年10月30日

John Tozzi (BusinessWeek誌、中小企業担当記者)
米国時間2009年10月23日更新 「The Rise of the 'Homepreneur'」

 米国では、事業者の半数以上が自宅をオフィスとする在宅事業者だ。趣味の延長の風変わりなベンチャーとの偏見から相手にされないことも多いが、新たな調査によれば、どうやらそれは誤りのようだ。
在宅事業を営むことで家計の少なくとも半分を担っている「在宅起業家(homepreneurs)」は、米国内で推定660万人。在宅起業家全体で民間労働者の10人に1人を雇用していることになり、自宅外に事務所を構える同業他社と多くの点で遜色ないことが判明した。

 米マサチューセッツ州ケンブリッジの自宅で、ウェブ開発会社エージェンシー3を経営するスティーブン・ラブダ氏(35歳)の例を見てみよう。ドイツ銀行(DB)の元プログラマーであるラブダ氏は2003年、ウェブサイト構築の副業を始め、その3年後に独立開業した。エージェンシー3の年間売上高は、数百万ドル規模。近々雇用予定の5人目の従業員は、ほかの従業員や多くの契約スタッフと同様、在宅勤務となる。「事務所を借りるつもりはない」と同氏は言う。

 在宅事業者が台頭している背景には、1980年代に登場したテレコミューティング(情報通信機器を活用した在宅勤務)(BusinessWeek.comの記事を参照:2008年10月17日「Making Telecommuting Work」)と、1990年代のインターネットの普及がある。そして、近年のクラウドコンピューティングやオンラインコラボレーション、スマートフォンの登場によって、在宅事業者の増加傾向はさらに加速している。

 最近の調査では、ラブダ氏のような在宅事業者の米国経済における重要性が明らかになった。妻のキャロリン・オックルズ氏と共同で報告書をまとめたスティーブ・キング氏は、「本格的な事業を営む在宅事業者が増えている」と話す(夫妻は米カリフォルニア州ラファイエットの自宅で、小規模な調査・コンサルティング会社イマージェント・リサーチを経営している)。

 この報告書は、米国の国勢調査データや米中小企業庁(SBA)の報告書、そして米ネットワーク・ソリューションズ(NSI)と米メリーランド大学ロバート・H・スミス経営大学院が提供する1500社の中小企業成功指標のデータを分析してまとめられた。


「在宅事業者は真っ当な企業である」との認識が広まる

 彼らがまとめた調査結果をもう少し詳しく紹介しよう。在宅事業経営者の43%は、家計収入の少なくとも半分を稼ぎ出している。だが、自宅外に事務所を構える企業に比べれば、全体的に事業規模は小さい。年間売上高が12万5000ドル(約1150万円)以上の在宅事業者は約35%に過ぎないが、自宅外に事務所を構える企業では、その割合は75%にもなる。

 とはいえ、資金調達や福利厚生、マーケティング、イノベーションなど、事業を営むうえで重要な点に関しては、ほかの中小企業に負けていない。

 在宅事業者が雇用する従業員は、経営者を含めて平均2人。総雇用者数は1300万人以上に達し、ベンチャーキャピタルが出資する企業の総雇用者数よりも多い、とキング氏は指摘する(全米ベンチャーキャピタル協会=NVCA=によると、ベンチャーキャピタルが出資する企業の2008年の総雇用者数は1210万人だった)。

 在宅事業者には、業務を経営者の自宅で集中して行っているケースもあれば、自宅を本拠地としながら主な仕事場は顧客の家やオフィスというケースもある。在宅事業者の業種は多岐にわたるが、特に多いのは、企業向け専門サービス、建設、小売り、個人向けサービスだ。

 高度な業務を行う在宅事業者の増加には、いくつかの要因がある。まず、技術の進歩により、場所を問わず容易に開業できるようになったことがある。だが、同じく重要なのは、「在宅事業者は真っ当な企業である」との認識がビジネスの世界に広まってきたことだ。

 ラブダ氏はエージェンシー3の経営を通じて、この意識変化を実感してきた。「開業時には、事務所を借りるしかないと思っていた。きちんとしたビジネス相手と認められるためには、顧客を迎え入れるオフィスが不可欠だと考えていた」と言う。

 だが、その必要はなかった。顧客が、オフィスを訪問したがらなかったのだ。ラブダ氏は顧客の職場か喫茶店で顧客と会っている。必要に応じて、時間貸しのオフィスを会議室として借りることもあるという。


インフラ費や固定費がかからず、低コストが競争力に

 ラブダ氏は今では、在宅事業者であることがエージェンシー3の信頼性を損なっていると感じることはないという。むしろ、在宅事業者であることがセールスポイントだ。「競合他社のようなインフラ費や固定費がかからない分、安い価格設定が可能になっている」。

 実際、在宅事業者の財務上の最大のメリットが、営業費の低さであることは明らかだ。

 SBAは2006年、自宅の事務所経費を計上した個人事業主と、事務所の賃貸料を計上した個人事業主の納税申告書を比較する報告書を発表した(資料)。分析結果からは、在宅事業者の売上高と純利益は、自宅外に事務所を構える事業者を平均で下回ることが判明したが、売上高純利益率でみると、黒字経営の在宅事業者が36%、自宅外にオフィスを構える事業者が21%と、在宅事業者に軍配が上がった。

 キング氏は、大企業が固定費削減を目的として業務委託を進める中、在宅事業者の影響力はさらに増すと予想する。「自宅で起業する個人事業主の割合は、今後20〜30年で現在の倍になる可能性を秘めている」。
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